臭い(におい)を感じる仕組み

臭い(におい)を感じる仕組みは簡単に言うと、ニオイという物質が嗅覚を通じ、脳で判断されるというものです。

「におい」とは物質です。その物質が鼻に入り、鼻の中の嗅細胞にキャッチされると電気信号に変えられ、その信号が神経を通って脳の嗅覚野という部分で解析され、私達がにおいの性質を認識するという仕組みです。

臭い(におい)を私達が認識する大まかな順序は以下の通りです。

  1. におい物質が空中に漂う
  2. におい物質が鼻の中に入る
  3. 鼻の中の上側にある嗅粘膜ににおい物質が張り付く
  4. におい物質は溶けて嗅繊毛にキャッチされる
  5. 嗅細胞がにおい物質を電気信号に変換する
  6. 電気信号は嗅球で識別され脳の各部へ情報が伝えられる
  7. 脳の各部で情報が解析される
  8. 私達がにおいの性質を認識する

順を追ってもう少し詳しくご説明します。

1.におい物質が空中に漂う

におい(匂い・臭い)とは科学的に言うと分子構造を持った物質です。

「におい(匂い・臭い)とは何か?」ということに関しては以下にご説明していますので詳しく知りたい方はそちらを参照ください。

2.におい物質が鼻の中に入る

人間の場合、においを感じるためにはにおい物質が鼻の中に入る必要があります。

たとえばバラの花があったとすると、空気中にはバラから放たれた、におい物質が無数に漂っていて、鼻で空気を吸うと、空気とともに、におい物質も鼻の中に取り込まれます。

鼻の中に入るためにはにおい物質が空中を漂っている必要があります。これを科学的に言うと「揮発性」と言います。

つまり、人間は揮発性の物質しか匂いを感じることができないのです。

3.鼻の中の上側にある嗅粘膜ににおい物質が張り付く

鼻に入ってきたにおい物質は、鼻の中の上側(上鼻道の天井)にある嗅粘膜に張り付きます。

嗅粘膜の大きさは切手1枚ほどで、嗅腺(ボーマン腺)という部分から分泌された粘液で粘膜層を作っています。

嗅粘膜は嗅覚器の入り口となっており、ここから「におい(匂い・臭い)」の処理が始まります。

4.におい物質は溶けて嗅繊毛にキャッチされる

嗅粘膜に張り付いたにおい物質は粘液によって溶かされ、嗅細胞の先にある嗅繊毛にキャッチされます。

嗅繊毛(嗅小毛とも言う)は嗅細胞の触手のようなもので、嗅粘膜で溶かされたにおい物質を判別し、におい物質であればその情報を嗅細胞に伝えます。

判別は溶かされたにおい物質が嗅繊毛にある嗅覚受容体というものに結合できるか否かで行われています。

つまり、嗅覚受容体に結合できない物質は「におい(匂い・臭い)」とは認識されないのです。

5.嗅細胞がにおい物質を電気信号に変換する

嗅覚受容体とにおい物質が結合すると、嗅細胞内では特殊なたんぱく質や酵素の働きによりその物質の情報が電気信号に変換されます。

6.電気信号は嗅球で識別され脳の各部へ情報が伝えられる

嗅細胞で電気信号に変えられたにおい情報は嗅神経を通って脳の入り口にある嗅球という一次嗅覚中枢に伝えられます。

嗅球では多種多様にあるにおい情報を識別し「匂い地図」と呼ばれるパターンに分類します。

そのにおいのパターンを元に必要な情報が脳の各部に送られます。

7.脳の各部で情報が解析される

嗅覚における神経経路はまだ未解明な部分が多いのですが、概ね以下のような部分に情報が送られることが分かっています。

  • 視床下部
  • 扁桃体
  • 前嗅核
  • 前梨状皮質
  • 嗅内野→海馬
  • 大脳皮質(前頭皮質嗅覚野)

大脳皮質以外は広義の意味で大脳辺縁系と呼ばれ、「感情」や「記憶」を司る部分です。

例えば、視床下部と扁桃体は脳の感情や情動を司る場所です。嗅内野から海馬という流れは記憶に作用していることが分かります。

大脳辺縁系を通った後、大脳皮質の嗅覚野で匂いのイメージが整理され私達はその「におい」を認識することができます。

大脳皮質は思考や意思、論理行動など司る、正に脳の中心機能と言える場所です。

簡単に言うと、大脳辺縁系はどちらかと言うと野生的な行動を処理する場所で、大脳皮質は理性的な行動を処理する場所です。

視覚をはじめ殆どの感覚は一度大脳皮質で情報が処理されてから必要に応じて扁桃体や海馬に情報が送られるのに対し、嗅覚は直接扁桃体や視床下部などに情報が送られるのが大きな特徴です。

においは感情に直結する

大脳辺縁系は「感情」や「記憶」を司る部分とご説明しましたが、もっと詳しく言うと、食欲、性欲、睡眠欲、意欲などの本能、喜怒哀楽、情緒、神秘的な感覚、睡眠や夢などをつかさどっており、そして記憶や自律神経に関与している部分です。

つまり、ここに直接情報が送られることで感覚が理論的に判断される前に感情的な判断が下されてしまうのです。

においは主観的な要素が非常に強いと言われますが、その原因はここにあります。

例えば、においの好き嫌いは人によって異なります。

足の裏の匂いが「耐えられない」という人もいれば、「たまらなく好き」という人もいます。

恋人がつけていた香水も分かれた途端、嫌いな匂いになることが多くあります。

ラベンダーの香りは鎮静効果があると言われますが、ラベンダーの香りが嫌いな人には全く効果がありません。

このように「におい」を感じる仕組みには脳で感知するまでの物理的なものの他に、私達の体質や経験など個人的な要因が少なからず影響を及ぼしているのです。

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